現在そして今後のマンション市場を知るうえでは、過去のトレンドを把握することが大切です。今回は、2013年の金融緩和以降から2023年までの過去10年間における東京都の中古マンション価格について、どのようなエリアの物件価格が上昇したのかについて見ていきましょう。なお、今回用いるデータは、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報」になります。東京都中古マンションの坪単価推移(成約価格ベース)まずは、東京都全体の中古マンション坪単価推移(成約価格ベース)を見ていきましょう。2013年の金融緩和以降、2023年までの10年間で坪単価上昇率が62.7%と、東京都において中古マンションの価格が大きく上昇していることがわかります。なお、リーマンショックや東日本大震災の影響により、2007年から2012年にかけて坪単価は低下していますが、5年間での低下率は-13.3%と比較的小幅であったと言えます。東京都の坪単価上昇率TOP10エリア(成約価格ベース)次に、2013年から2023年の10年間における東京都の坪単価上昇率TOP10エリア(成約価格ベース)です。港区や千代田区、渋谷区といった元々坪単価の高い区の価格上昇率が大きくなっているようです。そのほか、足立区や江東区、立川市などの上昇率も大きく、これらのエリアは直近10年で人気となったエリアと言えそうです。エリア毎の坪単価(2013年時点)と坪単価上昇率(2013年~2023年)の相関縦軸に直近10年間(2013年~2023年)の坪単価上昇率(成約価格ベース)、横軸に2013年時点の坪単価(成約価格:円/坪)を取り、エリア毎にプロットしたのが上記になります。プロット図を見ても、右側(坪単価が高い)にあるエリアほど上位(坪単価上昇率が高い)に位置している傾向が見られ、2013年時点で坪単価が高かったエリアほど直近10年での価格上昇率が大きかったと言えそうです。東京都の中古マンション等取引件数東京都の中古マンション取引件数も見てみましょう。中古マンションの取引件数については、2013年の金融緩和以前から増加トレンドにあり、2013年以降も着実に増加していました。一方、2023年は取引件数が前年から減少しており、この点は今後の懸念点と言えそうです。エリア毎の坪単価上昇率と取引件数増加率最後に、東京都において坪単価上昇率が特に高かったエリアの中古マンション取引件数です。元々坪単価の高いエリア(港区、千代田区、渋谷区、中央区等)は2013年の金融緩和以降も取引件数はあまり増加していません。これらのエリアは、物件の数がそもそも限られているため、取引件数自体は増加していませんが、その希少性から直近10年間で坪単価が大きく上昇していると見られます。一方、足立区や江東区、立川市、三鷹市といったエリアは坪単価の上昇とともに中古マンション取引件数も大きく増加しており、需要も供給も増加した人気のエリアと見られます。直近10年で不動産価格が上昇したエリアの特徴まとめ以上が東京都のエリア毎の中古マンションの坪単価推移と取引件数になります。2013年時点で坪単価が高かったエリア(港区、千代田区、渋谷区等)の物件価格は、直近10年で特に上昇しています。これらのエリアは新しいマンションの開発スペースも限られており、取引件数が増加しているわけではありませんが、希少性の高い物件の価値がさらに上がった可能性があります。一方、中古マンションの取引件数増加とともに坪単価が上昇しているエリア(足立区、江東区、立川市等)については、直近10年間で中古マンションの供給も増えて人気となったエリアと言えるでしょう。次回は、エリア以外のファクター(坪数、築年数、最寄り駅からの距離、リノベーションの有無等)が物件価格に与えた影響について見ていきたいと思います。