現在そして今後のマンション市場を知るうえでは、過去のトレンドを把握することが大切です。今回は、2013年の金融緩和以降から2023年までの過去10年間における東京都の中古マンション価格について、どのような特徴(築年数、最寄り駅からの距離、リノベーションの有無など)を持つ物件価格が特に上昇したのかについて見ていきましょう。なお、直近10年で東京のどのエリアのマンション価格が上昇したのかについては、以下の記事もご覧ください。東京都の中古マンション価格を分析!直近10年(2013年~2023年)でどのエリアの物件価格が上昇したのか?中古マンション価格(坪単価)を決める要因中古マンションの価格はどのような要因(ファクター)で決まるのでしょうか。マンションのエリアや広さ、築年数など様々な要因が想定できるかと思いますが、今回はシンプルに以下の要因で価格が決まると想定したいと思います。【中古マンションの価格】 ・物件の坪単価×坪数【中古マンションの坪単価を決める要因】・取引年(売買した年)・エリア・最寄り駅からの距離・建築年(築年数)・リノベーションの有無・その他(マンション固有の要因)取引年はマンションの市況、エリアは立地、最寄り駅からの距離は利便性など、どれもマンションの坪単価を決める重要な要因となります。なお、今回は上記それぞれの要因と東京の中古マンション価格の関係について、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報」のデータを使用しています。一部、回帰分析という方法で分析しておりますが、回帰分析の知識は一切不要ですのでご安心ください。また、今回ファンズ不動産で用いた分析モデルについては、最後の備考欄に記載しております。坪単価を決める要因①:取引年(売買した年)中古マンションの価格に大きな影響を与えるのが、中古マンションの市況です。当然のことですが、市況が悪い時に購入すれば坪単価は低くなり、市況が良い時に購入すれば坪単価は高くなります。2013年の金融緩和以降、東京の中古マンションの坪単価は大きく上昇しており、いつ購入(売却)するのかは坪単価を決める重要な要因となっています。坪単価を決める要因②:エリアエリア毎に坪単価は異なりますが、この10年間でどのようなエリアの坪単価が上昇したのでしょうか。上記の図では、縦軸に直近10年間(2013年~2023年)の坪単価上昇率(成約価格ベース)、横軸に2013年時点の坪単価(成約価格ベース)を取り、エリア毎にプロットしています。プロット図を見ると、右側(坪単価が高い)にあるエリアほど上位(坪単価上昇率が高い)に位置している傾向が見られ、2013年時点で坪単価が高かったエリアほど直近10年での価格上昇率が大きい傾向にあったと言えます。坪単価を決める要因③:最寄り駅からの距離駅から距離が離れているとマンションの利便性は下がるため、基本的には最寄り駅からの距離が遠くなるほど中古マンションの坪単価は低下します。上記の図は、最寄駅からの距離が1分増加した場合に、中古マンションの坪単価がどの程度低下しているのかを表した図になります。例えば、直近5年間をみると、中古マンションが最寄り駅から1分遠くなるにつれて、坪単価がおよそ4万円程度低くなる傾向にあることが分かります。なお、2013年から2020年までは最寄り駅から1分離れた場合の坪単価へのマイナスの影響は年々大きくなっていましたが、2020年から2022年には横這いとなっています。これは新型コロナウイルスによる在宅勤務の普及により、駅から近いという利便性の価値が一時的に下がった可能性が考えられそうです。ただ、10年間を通して見れば利便性(最寄り駅からの近さ)の価値は大きく上がっていると言えそうです。坪単価を決める要因④:建築年(築年数)耐久性などから、基本的には築浅の物件の方が坪単価が高く、築古の物件の方が坪単価は低くなります。上記の図は、築年数が1年減ると中古マンションの坪単価がどの程度上昇しているのかを示しています。例えば、直近の2023年においては、1年建築年が浅くなると坪単価が5万円程度上昇する計算となります。つまり、その他の条件が同じであれば、2000年築の物件と2001年築の物件ですと、坪単価が5万円変わる傾向にあるということです。建築年について、2013年から2018年頃までは中古マンションの坪単価に与える影響に大きな変化は見られなかったのですが、ここ5年はその影響の度合いが大きくなっているように見られます。坪単価を決める要因⑤:リノベーションの有無中古マンションの場合、より快適な居住空間とするためのリノベーションの有無が坪単価に大きな影響を与えます。リノベーション済みの中古マンションである場合、中古マンションの坪単価がどの程度上昇するのかを示したのが上記の図になります。図を見ると、直近10年においてリノベーション済み物件の坪単価上昇幅が大きくなっていることが分かります。この背景には、資材価格の高騰などにより、直近10年でリノベーション費用の坪単価が大きく上がっていることがあります。そのため、上記はリノベーションの坪単価の相場と捉えてもよさそうです。中古マンション価格(坪単価)を決める要因まとめ以上が、直近10年間での東京都の中古マンションにおける、それぞれの要因と坪単価の関係になります。今回取り上げた5つの要因と坪単価の関係性については以下の通りです。・取引年(売買した年):直近10年は年々坪単価が大きく上昇している・エリア:元々坪単価の高かったエリアの坪単価上昇率が大きくなっている・最寄り駅からの距離:利便性の価値は上昇している・建築年:直近5年は坪単価に与える影響の度合いが強まっている・リノベーションの有無:リノベーションの坪単価は上昇傾向にある直近10年においては、立地がよいマンション、利便性が高いマンション、希少性が高いマンションの価格上昇率が特に大きくなっている傾向に見られます。今回は東京における中古マンションのそれぞれの要因と坪単価の関係について見ていきました。次回は、今回の分析を基にファンズ不動産で作成した、中古マンションの相場価格がわかる分析モデル「カマクラクンβ」をご紹介したいと思います。備考欄:今回の分析で用いた回帰分析モデル取引年毎に、坪単価を被説明変数、東京都の市区町村・リノベーションの有無・最寄り駅からの距離・建築年・坪数を説明変数とした、最小二乗法 (OLS) による回帰分析で計算。データは、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報」を使用。